
予算主義
マンションの会計は、公益法人の会計に準じて処理されます。管理組合という団体は、営利を目的とした団体ではありませんので、営利企業のように次年度の営業目標を立てて「これだけ儲けるぞ!」というような主旨での予算(目標)立ては行ないません。
「次年度は、これだけの費用でマンションを管理していこう!」というようなことを組合員の間(総会)で予め決定し、基本的にはその予算の範囲内でのみ理事会が管理組合の運営を執行することができるのです。そういった意味合いから、マンションにとって予算は非常に重要なものであり、故に「予算主義」と呼ばれています。
マンション会計の各種帳簿
財産の状況を透明にして適正にお金の管理を行なうために、マンションでは様々な帳簿が作成されます。主な帳簿として、①収支報告書、②貸借対照表、③備品台帳、④財産目録等が例としてあげられますが、その中でも最も重要な収支報告書と貸借対照表についてどのような帳簿なのか見てみたいと思います。
収支報告書(P/L) | 単年度(1年間)の収支状況を記載(決算書・予算書) |
貸借対照表(B/S) | 資産の状況を記載 |
備品台帳 | 所有動産(什器・備品等)の状況を記載 |
財産目録 | 貸借対照表(B/S)の詳細 |

収支報告書(決算書)では、単年度(1年間)のお金の出入りの状況を確認します。収入はいくらあって、支出はどの程度あったのか。それぞれの科目ごとに、本年度の予算額に対して増減はどうであったのかを確認します。収入と支出の差し引き(収支)がプラスであれば良いのですが、マイナスになった場合は、その要因を詳しく見て、次年度以降の対策を考えなければなりませんので、マンションの直近の財産の動きを把握することができる資料といえます。逆に予算を立てる場合は、前年度の実績に応じてどれくらいの収入や支出が見込まれるかを判断して各科目ごとに予算を計上することになります。
次に貸借対照表ですが、こちらは単年度でみるのではなく、マンションの資産状況を管理するための帳簿です。決算時点で、預金はいくらあるのか、債権・債務はいくらあるのか等々のことが分かります。例えば、資産の部の未収入金で管理費・駐車場使用料となっていた場合は、滞納者がいると考えられ(債権)、負債の部に未払金が計上されている場合は、決算時点で支払ができていない(債務)があると思われます。
収支報告書(決算書)との関係で見ますと、未収入金(管理費等の滞納)が発生している場合、収支報告書上では管理費は請求が発生した時点で収入があったものと会計上は処理します。滞納の場合は、「現金」が管理組合に支払われていませんので、その代わりに貸借対照表上で、未収入金という科目がたち、「現金はまだ受け取っていませんよ~」と分かるように表記することになるのです(発生主義=債権債務が発生した時点で計上)。
収支報告書と貸借対照表は、会計別に作成されることが望まれますので、一般会計(管理費会計)と特別会計(修繕積立金会計)でそれぞれ作成されることとなります。
なお、理事長は年に1度の総会で、主に上記のような会計帳簿を提出して組合員に当年度の収支状況の報告(決算報告)をしなければならないことになっています。
【区分所有法】
第43条 管理者は、集会において、毎年1回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。
【標準管理規約(単棟型)】
第58条 理事長は、毎会計年度の収支予算案を通常総会に提出し、その承認を得なければならない。
2 収支予算を変更しようとするときは、理事長は、その案を臨時総会に提出し、その承認を得なければならない。
第59条 理事長は、毎会計年度の収支決算案を監事の会計監査を経て、通常総会に報告し、その承認を得なければならない。