
管理組合とは?(1)定義・成立・権利能力
前項では「マンション」「専有部分」「共用部分」について紹介しましたが、マンションを理解するにあたって、管理組合という団体について知ることは非常に重要なポイントです。
さてさて、管理組合とはいったいどんな団体なのでしょうか。まず、区分所有法では以下のように定められています。
【区分所有法】
第3条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。
この条文の中に「~団体」と記載されていますが、これが管理組合を指しています。何やら建物等を管理するための区分所有者全員の集まりのようです。また、国土交通省の標準管理規約では次のようになっています。
【改正マンション標準管理規約(単棟型)】
第1条 この規約は、○○マンションの管理又は使用に関する事項等について定めることにより、区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保することを目的とする。
第6条 区分所有者は、第1条に定める目的を達成するため、区分所有者全員をもって○○マンション管理組合(以下「管理組合」という。)を構成する。
2 管理組合は、事務所を○○内に置く。
3 管理組合の業務、組織等については、第6章に定めるところによる。
例えば戸建ての場合、建物全部に対して好きな時に好きなだけお金をかけて修繕や模様替え(リフォーム)をすることもできますし、また修繕をせずにボロボロになるまで使用することもできます。
しかし、マンションの場合はどうでしょうか。標準管理規約の第1条で定められている通り、色々な人が住む建物ですので、価値観も人それぞれ様々でしょうが、常識的に考えて、資産の面から見ても、快適さから考えても当然良好な住環境を保つ必要があります。区分所有者自身が所有する専有部分は自己で管理しますが、廊下や階段、屋上、敷地、はたまたエレベーターや駐車場設備等は、区分所有者みんなの持ち物(共有財産=共用部分)ですので、みんなで協力して管理していくことになります。
専有部分の所有者である区分所有者は、同時に、また、自動的に管理組合を構成する組合員となりますので、逆にいうと、管理組合の組合員になるのが嫌だからといって、団体から脱会するようなことはできません。管理組合の性質から考えると当然ですね。
このように、区分所有者みんなで共有の財産を管理する団体が管理組合なのです。
ポイント! 区分所有者=組合員 ⇒ 組合員の集まり=管理組合
ポイント! 占有者(賃借人=借りて住んでる人等)は組合員ではない
管理組合の成立
大まかにいうと、マンションが建設されて、購入者へ建物の引渡し(分譲)された時点で管理組合が成立します。よく、管理組合の「設立総会(分譲後一番初めに開かれる臨時総会)」という言葉を耳にしますが、この言葉は、便宜上使用されている表現であって、実際には、購入者へ建物の引渡しがあった時点で管理組合は成立しているのです。(例え1戸しか売れなくても、1戸が引き渡された時点で成立。残りの組合員は分譲主となる。)
ここで間違ってはいけないのが、実際に部屋を使い始める時ではないということです。新築分譲の場合は、分譲主から建物の引渡しを受けた時になります。(だいたい鍵をもらう日)
このようにマンションとして体を成した段階(区分所有関係が成立した段階)で、当たり前に存在することになる団体ですので、マンションにとって空気のようなものです。
ポイント! 管理組合の成立は1戸の引渡しがあった時。
管理組合の権利能力
それでは、いったい管理組合は何ができるのでしょうか。権利能力はあるのでしょうか。
まず、権利能力を有するためには、人格を有することが必要です。自然人である人間と、法律上の定めにより人格が付与される法人がそれにあたります。通常、管理組合は法人格を備えていませんので、どのような取り扱いを受けているのでしょうか。
管理組合は、法人格を有しない社団(権利能力のない社団)とされています。このことは、民事訴訟法29条以外に法令に明文化されてはいませんが、過去の裁判で以下のような判例が出されており、管理組合は①~④の条件を十分に満たします。
各種契約行為(管理会社との管理委託契約等)は、この法人格を有しない社団として行なうことはできますが、権利能力がないため、例えば土地の登記のような行為は、団体名で行なうことができません。(○○管理組合名義で登記ができない)仮に、管理組合で土地を取得しようとする場合は、管理組合を法人化して、権利能力を有した後にはじめて登記することが可能になります。
判例のエッセンス | 管理組合にあてはめると・・・ |
①団体としての組織をそなえ | 組織構成あり。 |
②多数決の原則が行なわれ | 区分所有法や管理規約に定めあり。 |
③構成員の変更にかかわらず団体が存続し | 組合員(区分所有者)が専有部分を売却して変更になっても管理組合は存続する。 |
④その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していること | 意思決定機関である総会=集会等があり、役員が選任される。総会の運営方法等も管理規約に定めがある。 |
【民事訴訟法】
第29条 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。
【昭和39年10月15日最高裁判例】
法人に非ざる社団が成立するためには、団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要する。