
マンション管理はストック型ビジネスモデル
建物は作ったら終わりでなく、存続する限り誰かが管理しなければなりません。
戸建てでも、末永く資産価値を維持し快適に居住するためには、継続的な管理が必要になります。定期的に屋根等を修理したり、地上波デジタル放送が開始されれば、それに対応したアンテナや設備に改修する等、必ずメンテナンスが必要になります。
建物は、こうした経年劣化や社会生活の変化に伴う社会的劣化等への対応が求められます。この点は、マンションも例外ではありません。
その名の通りマンション管理業界は、何か物を作って、売ったりするようなフロー型のビジネスモデルではありません。既に完成したマンションを管理することがメインとなりますので、建物が存続する限りストックしていくこととなります。
ストック型のビジネスですので、経済が不況になった場合、一時的にでも販売(消費)が低迷するとフロー型のビジネスモデルではダイレクトに影響を受けてしまう恐れがありますが、マンション管理業界は、不況になったとしても、これまで建設されて来たマンション自体が物理的に無くなるということがありませんので、直接的な影響を受けにくいと考えられます。言い換えれば、安定感があり、景気の好不況に左右され難い業界と言えます。
日本のマンションは益々増えていく

国土交通省の調査(平成20年度マンション総合調査※注1)では、平成20年度末現在で約545万戸(居住人口約1,400万人)のマンションがストックされているとの統計が出されています。この数字は、日本の人口の約10%の人がマンションに居住していることを意味しています。
昨今、全国各地の工場跡地や企業社宅、駅前等の再開発が行なわれ、様々な形態のマンションが建設されています。このマンション建設ラッシュは、人々のライフスタイルの変化によるマンション需要の高まりの象徴とも言えますが、同時に今後益々マンション管理業界が活性化し、ビジネスチャンスが拡大することを意味しています。
右肩あがりに増加するマンションのストック戸数からも、ビジネスチャンスは拡大していると言えます。
注1:マンション総合調査
国土交通省が、昭和55年度から実施している管理組合や区分所有者を対象としたマンションの居住状況や管理の実態を確認することを目的として行なう調査です。
建物の老朽がますます進行していく

マンションは建設されたその時点から物理的に劣化が進行します。
経年による劣化の他、技術の進歩による新たな製品の普及や社会的な基準の高まり、制度の見直し等による、社会的劣化も生じることになります。
雨風にさらされて、外壁や防水、鉄部等に経年劣化が生じますので、快適な住まいを継続して適正に維持するためには、しっかりとした計画に基づいた管理が必要になります。
また、耐震基準の見直しや、地上波デジタル放送への移行等は、マンションが建設された時点で全く問題ないスペック(建築・設備)とされていたとしても、こうした時代の変化(社会的劣化)が生じることで、建築・設備を改修する必要が出てきたり、対応する必要があることを象徴しています。
「全国のマンションストック戸数」を見ても、昭和63年以前に建設されたマンション(築20年超)のストック数は平成20年の調査時点で全体の34%を占めていることが分かります。
ストック数の増加と共に、今後益々マンションの老朽化が進行していくことが読み取れます。マンションが抱える老朽化の問題を解決するために、マンション管理の専門家が必要とされています。
建物の高齢化と人の高齢化
マンションにおいて、建物の高齢化と人の高齢化は深刻な問題です。

国土交通省の調査(平成20年度マンション総合調査※注1)によると、世帯主が60歳代以上の割合が平成11年度に比べ平成20年度では合計で14ポイント上昇していることが分かり、マンションの高齢化の実態が顕著に示されています(60歳代は全体の割合でトップ)。
マンション管理組合を構成する組合員(区分所有者)の高齢化が進むと、コミュニティー形成に大きな影響を生じることになります。管理組合を運営するために必要な管理費や修繕積立金の支払いが困難になり、マンションを維持管理していくための経費を担保することができなくなることが懸念されます。
また、孤独死の問題も含んでいます。壁一枚隔てたところに居住する人でさえ、どんな生活を普段しているのか全く分からないことがあるのもマンションの一つの特徴です。
こうした問題に対して、専門的な知識で対応することができる専門家の存在が今後益々重要になってくると考えられます。
注1:マンション総合調査
国土交通省が、昭和55年度から実施している管理組合や区分所有者を対象としたマンションの居住状況や管理の実態を確認することを目的として行なう調査です。
法整備や新制度への対応
・マンション管理適正化法の施行
・マンション建替え円滑化法の施行
・区分所有法改正
・マンション標準管理規約改訂etc…
マンションのストック数の増加と共に、快適な住環境を創造するためには管理が重要であるとの意識が高まり、平成13年に「マンション管理適正化法(マンションの管理の適正化の推進に関する法律)」が施行されました。
また、マンションの老朽化を背景に、「マンション建替え円滑化法(マンションの建替えの円滑化等に関する法律)」も平成14年に施行され、年々、マンション管理を取り巻く環境が整備され専門的な知識が益々求められるようになりました。
マンション管理業者では、事務所ごとに30組合に1人割合で成人の専任管理業務主任者をおかなければならないこととなりました。管理組合と管理委託契約を締結する場合も、管理業務主任者が事前に重要事項説明を行なう義務が生じたほか、委託業務の執行状況を管理組合に対して管理業務主任者が年に1度報告する義務も課せられました。
一方、こうしたマンション運営の在り方の変化に管理組合は対応し、適切なマンション管理を行なう必要があります。マンション管理適正化法により、マンション管理士資格制度が創設され、管理組合側の視点に立って、マンション管理士は、管理組合の運営その他マンションの管理に関し、管理組合の管理者等又はマンションの区分所有者等の相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うことを業務とする者とされています。
管理に対する時代の変化へ対応することが今後益々重要となってきます。
まとめ
このようにマンション建設ラッシュによるストック数の増加、建物の老朽化、高齢化、新たな法整備等々のマンションを取り巻く環境の変化により、それに対応する為にマンション管理士や管理業務主任者の専門的な知識・経験が必要とされる時代になっていますので、将来性ある資格の一つと言えるでしょう。